40いわゆる自費出版(紙の書籍)には様々なトラブルのリスクがある。
「詐欺」やそうでなくとも出版社につけ込まれたり、それをクリアしても、納得いった出版になるかどうか保証はない。それでもどうしてもチャレンジするなら最大限トラブルを避ける対策を施して臨むしかない。
Contents
自費出版の夢と現実
「いつかは自分の本を世の中に出したい」
そう願う人はたくさんいるが、いわゆる紙の書籍による「自費出版」には多額の費用が必要になる。
また、出版する方法や提携する業者にもよるが、おおむねその金額は安くても数十万円から場合によっては数百万円にものぼる。
それだけではない。
実は自費出版とは結構な確率で、大小さまざまなトラブルがつきものなのである。
出版を希望する人たちの夢や情熱が懸けられているところにつけこんで、食い物にしようとする出版事業者も残念ながら存在する。
もちろん、すべての事業者が悪質なわけではない。真摯に取り組んでくれる誠実な会社もたくさんあります。しかし、その上でもトラブルは起こり得る。
熱意や情熱はとても大切なのだが、こと契約ごとに関してはあくまで沈着冷静に対応しなければならない。
このコラムでは自費出版で起こり得るトラブルのパターンを説明し、そういう事態を避けて納得ゆく出版にするための対策を紹介し、その上で電子書籍のセルフ出版に言及する。
自分の本の出版を検討している人はぜひ参考にして欲しい。
Sponsored Link Advertising
自費出版の3大トラブル
自費出版の途上でトラブルが発生するのには、大小さまざまなパターンが存在する。そしてそれらが絡み合ってトラブルを深刻にするのである。
しかし元を正せばおおむね3種類に分類できる。ここでは3つの代表的なトラブルを紹介しておこう。
その3つとは・・・
- 契約内容の行き違いが生むトラブル
- 出版社がおだててつけ込むことが生むトラブル
- 制作・流通過程のトラブル
それぞれのパターンの実情をもう少し詳しく解説しよう。
契約内容の行き違いが生むトラブル
「費用の一部は出版社が負担いたします」「書店の販売網に乗せることができます」などと謳う出版社がしばしば見受けられる。それに乗るとかなりの確率でトラブルが待ってる。
典型的な例を挙げてみよう。
トラブル例 Bさんの場合
制作費用が気になっていたBさんはその出版社を信頼して自分の本の出版を託した。
ところが、いざ作業が始まると「この部分には追加料金が〇万円かかります」「この材質の紙を選ぶ場合はあと〇万円かかります」「この装丁にはさらに〇〇万円が必要です」と、どんどんオプション料金の請求が増えていくではないか。
そしてオプションは作者の負担になるということだった。結果は最初に言われた金額の倍以上に膨れ上がった。
出版社がおだててつけ込むことが生むトラブル
出版社が「おだててつけ込む」・・・個人においては「おだてられてつけ込まれる」パターンは、すべてではないにせよ前述の契約内容に関するものよりも、出版社が確信犯的な部分もあったりする。場合によっては詐欺に近い悪質なものもあるのだ。
そしてつけ込まれた先に起こるのは、前者のような食い違いのさらに作為的で深刻なトラブルである。
典型的な例を挙げてみよう。
トラブル例 Kさんの場合
推理小説を書いてみたいと以前から思っていたKさんは、いつも購読している雑誌で「推理小説コンクール作品を大募集!受賞作は出版を約束」というお知らせを見つけた。
Kさんはさぁとばかりに、熱意に燃えて真剣に書き上げた作品を投稿した。残念ながら受賞は逃したが、出版社から電話があった。
「あなたの作品は残念ながら受賞はできませんでしたが、非常に素晴らしい作品だというのが私どもの感想です。どうです、自費出版してみるつもりはありませんか」
先方が言うには、彼らから執筆内容に関して丁寧なアドバイスが受けられて、自費出版でも書店流通に乗せることができるとのことだった。
「少し手を加えれば、そこそこのセールスが見込めるクオリティですよ!本当のところは費用が300万円かかる出版なのですが、あまりによい作品だから50%は弊社が責任を持って分担します。ちょっと売れればスグに回収できるので、いかがですか?」
ここまで言われたKさんはその気になって、個人の貯金から150万円という大金を投げ打った。
そして、結果は一体どうなったか・・・?
ほとんど売れずに、後悔だけが残った。もちろん売れないからといって出版社に文句を言うわけにもいかない。言ったところで、それが市場の評価だと言われるだけだ。
先方が持ったという半分も怪しいものだ。見積もりなど素人相手にどうにでも書けるから、おそらくその出版社はKさんからの出費で利益を上げているのに間違いないだろう。
Sponsored Link Advertising
制作・流通過程のトラブル
信頼ができる良心的な出版業者と契約を交わせたとして、その後制作を進めていく中でのプロセスごとのトラブルのパターンを挙げてみよう。
編集作業過程のトラブル
自費出版をする場合、契約後に原稿の編集作業に入るが、自分自身で執筆している場合は担当の編集者に原稿を委ね、校正を何度もおこなう。
この過程で原稿の内容が大幅に削られたり、意図とは違う校正原稿が上がってきたりすることがある。そうなると作者にとって考え方が否定されたような気持ちになり、編集者と揉めかねないのがこのプロセスだ。
製本過程のトラブル
校了、すなわち原稿の編集や校正がすべて終わると、本としての装丁や帯文などの装飾部分を作る製本過程に入る。読者の目を引き、手に取ってもらえるかほぼ決定づけてしまう大変大事な作業と言える部分だ。
装丁作業は大抵は編集者ならびにデザイナーの共同作業で進められる。帯文は出版業者が社内および社外で適切な人を探すのが常だ。
深い専門知識や実践経験が必要な作業でもあるので、作者はこの過程を出版社業者に一任するケースもあれば、作者の意向を最優先で進めるなどさまざまである。
どちらの手法でも間違いではないが、丸投げは避けたいものだ。不本意な製本になっても後の祭りだから。
流通・販売・広告過程のトラブルと対策
製本された完成書籍は、書籍の流通・販売網に乗るが、自費出版ではとりわけこの過程にしばしばトラブルが発生する。
すなわち、かたや出版社が自社の利益を上げるために高額の費用をかけて戦略的に流通させる商業出版書籍、かたや限られた予算で少量製本した自費出版書籍となると、企業としてはどうしても前者が重んじられて配本される傾向にあるのは否めない。
また、たとえ配本されたとしても、流通先の書店のスケールや地域性ゆえに偏った部分があったり、書店愛でも目立たない場所に陳列されたりする。
すると、結局売れ行きが芳しくなければ売り上げが悪くて返品されたりしてしまうこともある。
このポイントは書籍を発行する出版業者がどんな風に流通させるのかは、絶対に前もって確認しておく必要があるということだ。
確認すべきは流通先の書店の数や書店のスケールだけではなく、目立つ棚のところに書籍を置くことができるのか、取次業者に任せっきりにせず出版業者が書店に強い立場で配本数を増やしてくれるかなど、その出版業者の実力や流通へのこだわりを聞いてみよう。
なかには広告の掲載によって、販売数を増やす手法もある。作者自身が世の中にまったく認められていない場合、書店の棚に並ぶだけで販売数を獲得することは不可能に近い。
出版予定日のタイミングで新聞等の媒体に広告を載せて、幅広く認知されるアプローチをするとよいだろう。
自費出版上のトラブルと対策
一般的に「自費出版」と呼ばれている場合の多くが、実は「自費印刷」に過ぎないのである。下手すると業者の食い物にされているだけで、実際には本が店頭に並ばない詐欺まがいのビジネスも存在する。
そういうトラブルや被害に決して遭ってはいけないので、見破り方や対策も含めて言及しておこう。これには「自ら出版社に依頼する場合」と「出版社からアプローチされた場合」に分けて解説しよう。
自ら出版社に依頼する場合
自分から出版社に依頼をするのには覚悟が要る。何かが起こっても基本的に自己責任になるからだ。それをわきまえた上での対策を解説しよう。
詐欺まがいの出版社かどうかをあらかじめ見極める方法
そこそこの大金を投入して自分の作品を託そうという出版社や事業者が、本当に信頼に足るものかというのは、非常に重要なことだ。
実は単に印刷業者であって、出版などしていない・・・そんな詐欺まがいのケースも考えられるのだから、気をつけないといけない。残念ながらいつの時代でも、どこにでも善良な市民を食い物にしようとするハゲタカのような悪徳業者は存在する。
そんな輩には絶対に引っ掛かってはならない。
本当に書籍を出版したいのであれば、いかがわしい出版業者に引っ掛かったらお金をドブに捨てるようなものなので、重々注意が必要だ。
そのようないかがわしい業者かどうかをあらかじめ見極めるのは、実は簡単なのだ。
もし自費出版のアクションを起こす場合には、取り次ぎを依頼する選択肢としての出版社が挙がったら、次の方法で絶対に確認をしておいて欲しい。
日本書籍出版協会の「出版書誌データベース」検索ページにて、その出版社の名前を入れて検索すれば、詐欺まがいか信頼できるかが判明する。
何らかの本を書籍として流通させているのなら、必ず検索結果で出てくるはずです。もっと言えば、出版物が五千書を超える場合は多すぎて対応できない旨のメッセージが出てくる。
そこでその出版社や業者が出てこなければ、そもそも書籍など書店で流通させていないということになる。
そしてさらに言えば、検索で何らかのものが出ていたら一応は信用できるとしても、必ずしもその出版社の本が書店の店先に並んでいると言うことを意味するわけではないのだ。
ただシンプルに注文可能であるということを意味するのみであり、実際に書店の店頭に常に本が陳列されている状態にするというのは、実は大変難しいことなのだ。
それなりの販売が期待できるものでなければ、店頭に置かれないのが常だからである。
その分野の出版物を探す折に、その出版社が思い浮かぶとかその分野で認知されているかとどうかがまず大事であり、たとえば中近東の旅行記を出版したい場合なら、中近東の旅行記を注力して出している出版社に相談するのがまず手堅いだろう。
その出版社がまっとうに書籍を世に出しているとしたら、あとはホームページなどを精査して、その出版社の理念などを見極めるのが大切だ。
信頼ができる出版社や担当者を選ぶことが大事
自費出版を出版社や出版事業者に依頼するのは、あくまで「個人」だ。普通の人は出版にも契約にも不慣れだろう。そういうところにつけこんで食い物にしようという動きは、個人対企業において至るところに潜んでいると考えよう。
執筆の熱意や時間、そして多大な費用をかけてせっかくチャレンジした自費出版が、詐欺まがいの状態に遭ったり悔いが残る中途半端な結果を生まないように、依頼先としては確実に信頼できる会社を選ばないといけない。
納得するまで説明を求める
トラブルを避けるためには、まだ検討の段階であっても少しでも不審なところや理解できないところがあるとしたら、絶対にうやむやにしないで問い合わせて、納得できるまで説明をもらおう。
そうすれば内容が明らかになっていくうえに、相手の会社および担当者がどのぐらい誠実なのかも実感できることになる。
もし色々な質問をうるさがって、答えることをおざなりにするような担当者や会社は敬遠しよう。また、可能な限り口頭で終わるのではなく、書面として残るような形で確認ややり取りをするとなおよいだろう。
相手のいいなりに印鑑をつくのはとにかく危険である。
必ず細かいところまで内容を確認するのは必須だ。「何となくわかった」程度で話を進めるのは絶対に避けよう。
悪質な場合は、見積もり書の内容あるいは資料に書かれていることと、実際の契約書の内容が食い違うというケースもある。
契約というのは非常にシビアなものなので、何度も何度も納得できるまで読み返して、さらにもう一度読み返すぐらいの慎重さでちょうどよいぐらいだ。
第三者の目も利用しよう
また、自分ひとりだけではなく、家族や友人、信頼できる知り合いや法律のプロフェッショナルに相談してみるのもよいだろう。
あなたができることは正しい知識によって質問攻めにすることに尽きる。どんな些細なことでも、徹底的に質問して自分の納得がいくまで説明をしてもらおう。
心から納得ができれば、契約の印鑑を押してもよいだろう。営業担当者たちも出来ればトラブルは避けたいはずだから、まっとうなやり方で進めていけばきちんと対応してくれるはずである。
担当者が悪人には見えないというような理由で、安易に決めては絶対にいけない。検討する時点でビジネスはもう始まっていることを、忘れないようにしよう。
出版社からアプローチされた場合
出版社からのアプローチで「あなたの本を出版させてください!」「よい本なので出版しませんか?お力添えしますよ!」という話の中で、詐欺まがいのものがあるのは事実だ。
こういうことは音楽関係のCD制作出版業者でも同じ構図でよくある話だ。パターンとしてはスカウト的なアプローチで「あなたの音楽は売れそうだからメジャーデビューしましょう、そのためにはこれこれこれだけのお金が必要です」というやり口である。
これが書籍関係でもしばしば起こる。
ほとんどその目的のためのコンクールも存在する。これらはある意味、一部で見られるような、タレント志望者からレッスン料や研修料をむしりとるために運営するタレント養成スクールにも似ている。
前項の注意点に照らしたうえで、よほどの信頼を感じられる場合でもない限り、このパターンは敬遠した方が無難だろう。
あなたがもしプロの作家になるつもりなら、別方向のおすすめの方法がある。紙の書籍へのこだわりを捨てて電子書籍で自費ゼロで出版することだ。これに関しては次の項でより詳しく触れていこう。
自分でやれば自費ゼロで出版可能
自費出版をするなら紙の書籍の「書店流通」よりもインターネット書店、なかでもAmazonへの出品がおすすめである。
そしてさらには、紙の本へのこだわりも理解はできるが、今の時代の趨勢から言えば、どう考えて電子書籍の自費出版おすすめであると、経験者の私がはっきりと断言しよう。
もっと言うと、電子書籍の中ではアマゾンのキンドル・ダオレクト・パブリッシングがセルフ出版として最もおすすめできる。なぜならWordのノウハウだけでできることと、売れ方がやはりアマゾンが格上だからだ。
自分の本を世の中に発信したいと思うのであれば、Wordで作成してキンドル・ダイレクト・パブリッシングの活用をし、すぐにでも出版できる。
その上、書店での販売可能性よりも、アマゾンへの出品によるあなたの書籍が世の中の人たちの目に触れる可能性は間違いなく高まる。
Amazonでのキンドル・ダイレクト・パブリッシングのためにWordでキンドル書籍としての体裁にするノウハウは筆者の下記の書籍で詳しく説明している。
おわりに
自費出版を夢見る人は、それが多額の費用と労力が必要であり、しかも回収の見込みはとてつもなく薄いことを覚悟する必要がある。
そのうえ、詐欺ではないにせよ出版業者につけこまれるという人為的なリスクもあることも、同様に覚悟のうえで臨まなければならない。
あくまで自己責任なので、覚悟のある人はチャレンジして可能な限り出版社との行き違いを避けて出版されることを望む。
それには、この記事で挙げたトラブル対策を念頭に慎重に進めて欲しい。そこまで覚悟することに違和感を感じる人であれば、電子書籍やnoteなどの他の選択肢を考えるのもよいのではないだろうか。
筆者のKindle本
MASAの書籍は読み放題対応!登録後1ヶ月は無料(1ヶ月手前で辞めるのもOK)