I Should Have Known Better
1964年2月25日、2月26日収録
Contents
ジョン・レノンによるフォークロック
「I SHould Have Known Better(恋する二人)」はアルバム『ハード・デイズ・ナイト』のA面2曲目、ジョンによる秀逸なアルバム表題曲の後に立て続けにジョンの素晴らしいフォークロック・チューンが始まる。
彼の少しハスキーでありながら潤いと艶がある声、そして時折り聞かせるファルセットは最高にイカしている。
アルバムではさらに続く「If I Fell」「I'm Happy To Dance With You」まで、ジョンの作品が冒頭から4曲続くのである。さすがに4曲目はボーカルはジョージがとっているが、それにしてもジョンのこのアルバムでの仕事は華々しい。
そもそもこのアルバムは、初めてカバー曲なしで13曲全てがレノン/マッカートニーのオリジナル曲である。
そして実質的にはそのうち10曲は、ジョンが書いたものだ。ジョンのコンポーザーとしての才能が見事に開花した、初期の最高アルバムと言ってよいだろう。
このアルバムに関してもうひとつ付け加えると、晩期のアルバム『Let It Be』を除けば唯一のリンゴ・スターのボーカル曲が収録されていないアルバムでもある。理由は定かではない。
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映画の劇中演奏シーン、口パクなのにキーが半音低い?
この「恋する二人」は映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』の中で二回流される。1回目は彼らが列車で移動中の貨物車両の檻の中でトランプに興じているバックで流される。
そしてラスト間近のコンサートのシーンでは、劇中の演奏として登場する。音源自体はレコードのものを使った「リップ・シンク」つまり口パクだ。
ここでひとつ、一部のマニアの間で謎として語られていたことがある。この2回流れる同曲のキーが、場面によって違うのである。
1回目はレコード音源と同じGキーだ。ところがラストのコンサート時でのキーはG♭であり半音低く、テンポも少しだけ遅い。テンポに関してはアナログ音源の宿命である。
デジタルであれば速度は変えずに音程を変えることはできるが、アナログの場合は再生速度を落とすと音程が下がる関係性は仕方がない部分だ。
理屈はそういうことだがその理由がわからない。ビートルズ自体は日本公演がそうであったように、声の調子などの理由でキーを半音下げて演奏するケースが時折りある。
でも、口パクなので、わざわざスピードを犠牲にしてまでキーを下げる理由が見つからないのだ。
この謎の正体について、実は同映画を監督したリチャード・レスター自身によって、後に明かされていた。
謎を生んだ原因はPAL方式
洋書でしか入手できない書籍だが、J. Phillip Di Francoによる『The Beatles in Richard Lester's A Hard Day's Night - A Complete Pictorial Record of the Movie Hardcover』の中のレスター監督へのインタビューで以下のような事実が明らかにされている。
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映画ラストのコンサート・シーンを観れば、彼らの演奏をテレビカメラで撮影しているモニター映像が、モニタールームのテレビ画面に映し出されるシーンが度々登場する。
実はこのシーンのために半音下げざるを得なかったのだ。
リチャード・レスターによれば、このモニタールームのシーンを普通に撮影したところ、テレビ画面の中で黒い帯状の画像ノイズが上下する「フリッカー現象」が起こったのだ。
この原因はフォルムスピードの差にある。
映画撮影時のフィルムスピードは世界共通規格の24fps(フレーム/秒)である。そして英国のテレビはPAL方式と呼ばれる25fpsなのだ。
つまり、毎秒25フレームで撮影されたテレビモニター画像を毎秒24フレームで撮影したものだからフリッカー現象が起こったということなのだ。
画像ノイズを生み出さないためには同等以上のフィルムスピードでテレビモニターを撮影するしかないので、このシーンはフィルムスピードを25fpsに変更して撮影された。
その映像が再生されるのは24fpsなので、結果的にスピードが遅くなった分音程も下がり、それが半音の開きを生んだというカラクリが、リチャード・レスター監督によって明かされたのである。
まぁ、マニア以外の人にとっては、どうでもよいことだろうが・・・(笑)
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