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※アルバム『With The Beatles』フル・プレイリスト
ロカビリー音楽
1950年代の末期、ビートルズの本拠地はリバプールであった。港町ゆえにアメリカから来た船乗りたちが持ってくる音楽がもっとも目新しく、彼らを夢中にさせていた。
エリヴィス・プレスリーやバディ・ホリー、リトル・リチャードやチャック・ベリーが若きビートルズのお気に入りであった。
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彼らの音楽は「ロカビリー」や「ロックンロール」と呼ばれた。ロカビリーとはブルースにカントリー&ウェスタンの中でも泥臭い「ヒルビリー」が合わさって生まれた音楽である。後にロックンロールという名称が一般的になる。
日劇ウェスタン・カーニバル
同じ頃の日本では、「ロカビリー」という名の下、エルヴィス・プレスリーやエディ・コクランなどの白人シンガーをお手本としたドメスティックのロカビリー歌手平尾昌晃、ミッキー・カーチス、山下敬二郎たちが日劇「ウェスタン・カーニバル」で黄色い喝采を浴びていた。
「ウェスタン・カーニバル」について少し触れておこう。
日劇のオーナーである「東宝」が1958年2月8日に第1回を開催した音楽フェスティバルである。その名の通り当初はカントリー&ウェスタン音楽が中心となっていた。
この企画はヒットし、定期的に開催されるようになって、1950年代にはウェスタンから派生したロカビリー・ブームを生み出した。そして1960年代後半にはGS、すなわちグループ・サウンズ・ブームにつながってゆく。
さて、ビートルズのブレイク前は、エリヴィス・プレスリーの人気は英語圏だけでなく日本でも絶大で、多くのカントリー&ウェスタンの歌手がエルヴィスに憧れてロカビリーに寄って行った。
だから日本においては圧倒的に白人シンガーがメインで、黒人シンガーのリトル・リチャードなどはむしろ例外であり、チャック・ベリーを知る者はごくごく少なかったであろう。
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チャック・ベリー
一方、エルヴィスも大いに尊敬しつつ、黒人シンガーの素晴らしさに若い頃から着目していたビートルズの、とりわけジョン・レノンがチャック・ベリーを贔屓にしていたことは有名だ。
なにせ、彼をロックンロールの別名だとまで言い、またロック史上最初の詩人だとも言っている。
チャックの代表曲のひとつ「ロール・オーバー・ベートーヴェン」はシングル盤として1956年にリリースされた曲だが、チャック好きのビートルズはセカンド・アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』のB面トップにこの曲を入れた。
ビートルズのライブ・レパートリーでもあり、レコードであっても伝わるノリノリの演奏にファンは圧倒された。ライブ映像を観てもカヴァーというより、完全に持ちネタになっているのが分かる。
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ベートーヴェンをぶっ飛ばせって?
ビートルズ人気が高まりゆく初期段階での日本では、オリジナルかカヴァー曲ということには無頓着であり、1964年の半ばでは「ツイスト&シャウト」や「プリーズ・ミスター・ポストマン」などのノリの良いカヴァー曲が日本のヒットチャートを賑わしていた。
そして「ツイスト&シャウト」のB面が「ロール・オーバー・ベートーヴェン」という両面ともカヴァー曲のシングル盤が1964年の初夏にリリースされたが、そのセレクトは日本独自のカップリングだった。
当時の日本の音楽ファンは、普通はシングルのB面はクオリティが落ちるものなのに、ビートルズは違うという認識が支配的だった。
そして「ロール・オーバー・ベートーヴェン」が取り上げられたおかげでチャック・ベリー人気にも火がつき、その名は一躍日本でも急激に有名になった。
この曲の当時の邦題はふるっていた。なんと「ベートーベンをぶっ飛ばせ」という勢いのあるタイトルだ。それはそれでアリだと思うが、意味的には少し違う。
roll over A (人)はAさんの体を転がす、あるいはAさんに寝返りを打たせる、である。冒頭のレコード・ジャケットの意匠を見れば転がされてビートルズの方を向いたベートーヴェンの風情だ。
私見だがおそらくは・・・眠っている(あの世にいる)ベートーヴェンさんにこちらを向かせて、最近流行りの素敵なロックンロール音楽を聴かせてあげようぜ、的な意味を持っているのではないかと思う。
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凄まじき逆輸入
ビートルズが取り上げて以来、日本では元々チャック・ベリーという黒人ロック・シンガーのことなどついこの間まで多くの人達が知らなかったはずなのに、まるで記憶を塗り変えられるように超一流ロックンローラーとなった。
その後もビートルズは数々のチャック・ベリーの曲をカヴァーすることになり・・・やがてチャック・ベリーは日本では「ロックンロールの神様」に祭り上げられるに到るのである。
同様にビートルズがカヴァーしたロックンローラーのバディ・ホリーも日本で人気が出た。凄まじき逆輸入効果と言わざるを得ない。
「ロール・オーバー・ベートーヴェン」はデビュー前はジョンがリード・ボーカルを取っていた曲だが、デビュー後はジョージ・ハリスンの十八番になっている。
イントロや間奏ではライブで膨大な回数弾きこなしてきたジョージの、年季が入った「チャック・ベリー」テイストのギターを堪能できる。
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