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大人気のモンスター・チューン
「オール・マイ・ラヴィング」はビートルズのデビュー後2枚目のアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』の中でも、とりわけ完成度ならびに人気も評価も高いモンスター・チューンである。
この楽曲は作ったポール・マッカートニーの桁外れの作曲の才能と、メンバー全員の楽器演奏力、そしてアレンジスキルが組み合わさった典型的な見本とも言える。
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ジョンがポールを絶賛した曲
ジョン・レノンは、この曲でポールが完璧な作曲能力を示したとベタ褒めしている。
レノン/マッカートニーの2人は親友でありライバルでもあり、常にお互いに対抗意識を抱いていたことは、彼ら2人の言動や周囲の人々の発言ではっきりしている。
だから、少々では褒めないどころか、あれならオレの方が上手くやるね、などと吹聴するスタンスが基本であり、それが嫌味なくできる関係性だった。
周囲の人々もよくわかっているので、仲が悪いとかの誤解もなかったのだろう。
そして彼らが相手を褒めるときは、心底そう思い、リスペクトして発言しているのだ。
この「オール・マイ・ラヴィング」にはブルースの要素はほとんどなく、シャッフル調のリズムがベースの、どちらかと言えば明るいカントリー&ウェスタン調のポップ・ロック曲と言えよう。
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ブルース色の薄い爽快系の曲
この『ウィズ・ザ・ビートルズ』を含めて初期のアルバムは、基本はロックンロールでその上にオリジナル以外のカヴァー曲がR&B中心なので、ブルース・フレイバーが香っている。
その中でブルース要素の少ないポップ曲は、より一層爽やかに感じられる。
デビュー・アルバムの『プリーズ・プリーズ・ミー』の中の表題曲もブルース要素はほとんどなくて爽快なナンバーだが、それと同じような位置づけなるのが、この『オール・マイ・ラヴィング』ということだ。
それらは彼らのレパートリーの中で、よりビートルズらしいオリジナリティを持つ楽曲なのである。
この曲のアレンジならびに各楽器の演奏も素晴らしい。
ポールはどの曲でも洒落たベース・ラインを紡ぎ出すが、こと自分の曲に関してラインの凝りようは凄まじい。メロディに対してのオブリガートのような、カウンターメロディを感じさせるベースを、しかもウォーキング・ベースで弾いている。
ウォーキング・ベースとはフォー・ビート・ジャズが典型的だが、1小節の4分音符を4つ弾く流れの中で、コードのルート音を弾くだけでなく他のコード構成音と、さらにその間の経過音を巧みに使って、まるで歩き回るような感じでメロディを伴って弾き続けられるベース・ランニングだ。
しかもポールのそれは、ジャズのベース・プレイヤーが弾く、やや規則的な(アルゴリズム的な)ものよりも遥かにメロディアスで、まるでリードベースのような・・・それでいて、しっかりコード・フィーリングは醸し出して役目を果たすベース・ランニングなのである。
メロディアスな分だけフレーズの動きが複雑になるが、ポール・マッカートニーはライブでもそれをしっかり弾きながら余裕で歌っているのだ。彼は作曲力だけではなく、演奏力も並大抵ではない。
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楽器演奏力も秀逸だったビートルズ
ドラムス、リンゴ・スターのこの手のシャッフル調楽曲における、ドライブするドラミングは絶妙である。
ジョージはもともとカントリーが好きなだけあって、この曲の間奏をモダンなカントリー・フレイバーで彩っている。もちろん使用ギターはグレッチのカントリー・ジェントルマンだ。
ジョンのこの曲でのリッケンバッカー325を使用したリズム・ギターは凄い。なにせ三連符でコード・バッキングをひたすら弾き続けているこのようなバッキングは、他では聴いたことがない。
1拍ごとに3回コードを弾くので(上から弾き下ろす)、アップ(下から弾き上げる)、ダウンとなり、2拍目は裏返ってアップ、ダウン、アップとなる。
だから2拍をワンセットで捉えて弾くことになるが、これは結構難しい弾き方なのだ。それを延々やるのである。
ところがサビの部分はそれをやめて、通常の弾き方に変える。これはひとつにはライブでの演奏を考えて、歌が入る時の三連符バッキングはさすがにきついから普通の弾き方に戻ると考えられる。
彼らは初期の楽曲は、基本的にライブでできないアレンジは潔しとしない自分たちのルールを持っていたからだ。(中期以降はライブ活動をしなくなり、そういう縛りを自ら解いていった)
あるいは・・・ジョンぐらいの腕を持つと歌いながらでも三連符バッキングが可能であるのだが、サビで音の景色を変えるために弾き方を変えているとも考えられる。こちらの方が有力かも知れない。
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彼らはビジュアルもよく考えていた。
ライブ演奏の映像を観ればわかりやすいが、ポール、ジョージ、ジョンの3人がハモるときに、サビの部分はポールはポールでマイクを単独で使い、ジョージとジョンが別のマイク1本を二人で共有してハモる。
ひとり1本にせず、二人が近づいてハモるところがミソだ。ビジュアル的にカッコいいからであろう。
しかし、これだけではないのだ。
さらに・・・2コーラス目に入るとポールの主旋律にジョージがハモをつけるのだが、この時にポールに近づいてマイクをポールと共有する。
ジョンとジョージがハモるビジュアルは他のバンドでも観られるやり方だが、このパターンのポールとジョージのビジュアルたるや、ポールは左利き用のベースなので二人が鏡に映したような左右対称になり、2本のギターのネックがV字を描く。
これは滅多に観られない光景である。また、ポールが使用しているヘフナーの通称ヴァイオリン・ベースもビジュアルがユニークなところを狙っているようだ。
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当然この左右対称のカタチになるのは、曲の見せ場であり、計算されたパフォーマンスと言えるだろう。彼らの美的センスの一端が垣間見られる。
※アルバム『With The Beatles』フル・プレイリスト
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