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思春期にハマった『 アビイロード』の想い出
筆者が中2の時にビートルズのアルバムを初めて買った。それが『アビイロード』だった。それまでは友人が赤盤や青盤をカセットテープに録音してくれたものや、FMラジオから録音したものを聴いてすでにハマっていた。
もちろんビートルズ自体は解散していて、その当時は各メンバーがソロでヒットチューンを生み出していた。
中1の時にカーペンターズで洋楽に覚醒した筆者の次なるショックが中2でのビートルズであったのだ。
ちなみに第3のショックはその後、中3の時だ。リアルタイムで聴いたレッドツェッペリンにぶっ飛んだ。
同級生の音楽好き友達である椋本くんが、やたら興奮しながら「これを聴いてみろ!」と学校に持ってきた飛行船が描かれたアルバムジャケットのLP盤を筆者に貸してくれたのだった。
その日自分の部屋のコンポで早速聴いて、本当に驚いた。ビートルズとはまた違う表現の、カッコよくて破壊力を持つサウンドだった。
ジャズに辿り着くまでにはそこから数年を要したが、それはともかくとして本題に戻そう。
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事実上最後に収録したアルバムは珠玉の名曲揃い
筆者は購入当時、そのアルバム『アビイロード』に深くハマり込んで聴いたものだ。ほぼ頭の中で空で再生できるほどに聴き込んだ。すべての曲が素晴らしかった。
先日、50周年記念エディションの再発盤『アビイ・ロード』がUKチャートのトップを飾って音楽ファンを驚かせたが、それは単に話題性だけでそうなったのではなく、改めて聴く者にとって、純粋に音楽性とクオリティの高さが並大抵ではないからこそ起こった出来事だと言えるだろう。
1曲目の「Come Together」からもう、あの押し寄せるようなロック感とドライなフィーリング、体の奥から突き動かされるようなビートは凄いと感じた。
2曲目の「Something」はそれまでは迷いの音楽に聞こえていたジョージの音楽世界だったが、やけに吹っ切れたような爽やかで生き生きした楽曲だと感じたものだ。
3曲目の「Maxwell's Silver Hammer」はその陽気な曲調とおぞましい歌詞のギャップに戦慄した。その頃は深く知りようもなかったが、どうやら当時の彼らを取り巻く暗雲垂れ込める環境が曲のようだ。
・・・と、このようにいちいち楽曲にコメントをつけているとキリがないので、省略するが、B面のふたつめのメドレー「Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End」は奇跡的に素晴らしい出来栄えだと、今でも思う。
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『The End』の仕上げのアイデアで煮詰まったビートルズ
そしてその直後のしばらくの無音の後の「Her Majesty」の唐突な大音響の始まり方と、同じく唐突で「余韻の無い」ブツっと切れた不思議な最後も、余韻がないから余計に心に残るアルバムの終わり方である。
この「Her Majesty」の不思議な始まりと終わりも説が色々あって、筆者はひとつの結論を持っているが、それはまた別の機会にして・・・今回は「The End」について掘り下げよう。
この、実質4人で収録した最後の曲と言われる「The End」において、後にも先にも初めてのあまりにも貴重な2つのものが聴ける。
リンゴ・スターのドラムソロと、ポール・ジョージ・ジョンの3人の「ツーバース」、つまり2小節ごとにソロを回す、「ギターのソロ回し」だ。ギターバトルとも言われている。
本来はアルバムの最後をこの曲が飾ることになっていたので、(なぜ最後から2番目になったかは、「Her Majesty」のエピソードを書く機会に譲ることにするが)彼ら4人はどう仕上げるか、かなり議論をしたようだ。
そして煮詰まった末のアイデアがギターのソロ回しとドラムソロだ。この辺りからのくだりを、筆者が知り得た情報と想像力を総動員して、いつものように「小説風」に描いてみることにする。
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作中短編読み切り小説 『The End』
ソファに深々と座った彼ら4人とジョージ・マーティンは、アルバム最後の曲であるこの「The End」を仕上げるための議論をかれこれ2時間は続けていただろうか。
意見も出尽くして、全員が少々疲れ気味だった。なかなかこれだというアイデアが出てこない。
ここのところ立て続けにクールな楽曲を提供して、にわかに自信が顔に出てきたジョージが言った。
「万感込めたギターソロしかないんじゃないか?」
皆が納得とも反対ともつかない空気を醸し出す中、ジョンが突然顔を上げた。意外と明るい表情だ。
「うん、そうだな・・・ギターソロがいい。ただし・・・僕にも弾かせてくれないか?」
ジョージは、えっ?という顔をしたがポールは身を乗り出した。
「いいじゃないか!面白いよ。3人でライブテイクで演ろう・・・ツーバースを回す感じで」
マーティンは名案かも知れないとばかりに、大きく何度も頷いた。ジョージも納得した顔になっている。
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ポールはさらにリンゴに向き合って言った。
「僕たちが全員ソロを披露するんだ。君もドラムソロをやるべきだ」
言われたリンゴは大きくかぶりを振った。
「かんべんしてくれ。僕はドラムソロにはまったく興味がないんだ・・・」
その時、プロデューサーの威厳を示すよう背筋を伸ばしながら、マーティンが割り込んできた。
「いや、ポールの言う通りだよ、リンゴ。ここは自分のポリシーに反しても、ソロを叩く方がバンドとしては自然だ。まして・・・もういよいよ最後じゃないか・・・」
その「最後」という言葉に4人は、それぞれが様々な感情が入り乱れつつもこの十年の月日に想いを馳せているようだった。
リンゴは静かに顔を上げた。微笑んでいたので、答えは言うまでもなかった。
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そこから小一時間ほど、本番が始まるまでの時間、スタジオの中ではリンゴがソロの組み立てを考えている横で、エンジニアはギターアンプの調整をしていた。他の3人はモニタールームで想い想いにギターのフレーズを考えていた。
ポールとジョンはエピフォンカジノ、ジョージはギブソンレスポールを抱えていた。
いよいよ本番が始まる前に、ジョンは隣に座って微笑んでいたヨーコに優しく言った。
「すぐに戻るから、ここで待っていておくれ」
それを聞いてヨーコは少なからず驚いた。彼ら2人はいつも一緒だったのに・・・なぜ?ささやかにショックを受けたが、表情には出さなかった。
ヨーコは理解していた。自分がジョンの横にいることを、特にポールが快く思ってはいないことを。そしてそんなポールもジョンには気を使って、そのことに反対していなかったことも。さらに・・・ジョンはそのすべてをわかっていることも。
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そのジョンが「ここで待っていてくれ」と言うのだ。このセッションだけは、彼らだけで・・・最後のセッションだから・・・きっとジョンはそう考えて自分をモニタールームで待たせたのだ。ヨーコはそう考え、自分を納得させた。
リズムトラックが流れ出し、録音が始まった。リンゴは軽快かつビートがずぅんと腹に響く、シンプルで彼らしいドラムソロを叩き出した。
スタジオの中の全員が、そのソロで文句なしだと言う明るい顔をしていた。
良い雰囲気を漂わせたままギターのツーバースに差し掛かった。
ポール、ジョージ、ジョンの順番で2小節ずつ、それぞれがとても楽しげに弾いている。ソロ回しは3順めまでだ。
各人が個性が滲み出るフレーズを弾いた。
ポールはワイルドでダイナミックなフレーズ。ジョージはリズミカルで友人でありギターの先生であるクラプトン譲りのチョーキングビブラートを生かしたフレーズ。ジョンはお得意のコードとメロディーを抱き合わせて弾くフレーズだ。
いよいよ3巡目の最終の17小節と18小節にまたがってジョンの2拍3連、つまり2つの4分音符のインターバルにひとつの3連符を入れ込むフレーズを4回繰り返す印象的なフレーズでツーバースは終わった。
実にこの、たった1回のライブテイクで・・・文句なしにOKだった。
ジョージ・マーティンは彼らの複雑な中にも存在するバンドと言う生命に感銘し、そしてその生命が今突然にThe Endを迎えたことを、自らの五感すべてで確認した。
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