或る物書きの英語喉と小説まみれのジャズな日々

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「ザ・ファブル」今最も面白いアウトロー漫画!映画版はノーコメント

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ザ・ファブル画像

 

南勝久による「ザ・ファブル」は筆者としては久しぶりに出会った、本当に面白いアウトロー漫画だ。おかしな言い方だが、アウトロー漫画、あるいはスナイパー漫画としての品格を備えている。そして現在も進化しながら、連載が続いている。

 

稀有なる格調高きアウトロー漫画よ「ゴルゴ」を抜き去れ

 

小説では「ピカレスクロマン」つまり悪漢小説というものが存在する。犯罪者に限らず広い意味での悪人が主人公であり、「白い巨塔」なども含まれる。

 

それと同じではないが、多少似たニュアンスで漫画の世界に「アウトロー漫画」が存在する。ヒットしたもので言えば和久井健「新宿スワン〜歌舞伎町スカウトサバイバル〜」や高橋ヒロシ「QP」、真鍋昌平「闇金ウシジマくん」などだ。

 

そしてある意味この系譜の頂点?に立つとも言えるのが、さいとうたかおのライフワークである進行形の名作「ゴルゴ13」かも知れない。 

 

彼は瀕死になりながらも船から脱出し、あっと驚く方法で「血清」を作り、自らに注射して、どんな状況でも生き抜くプロフェッショナルの行動をまざまざと見せつける。

 

しかしそれだけではないのだ。船内の大人数の乗客や乗組員の命を救うことができるその「血清」を、必ず見つかってそれが何を意味するかが分かるようにして、置き去っていくのだ。

 

冷酷非情と思われているゴルゴのそういう行動は、実は彼にとってはデフォルトなのだ。

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他にもそういった類の、アウトローなりの「善なるもの」を描くエピソードがいくつかある。「闇金ウシジマくん」もそうだし「新宿スワン」は基本的にそういう方向性だ。

 

話を「ザ・ファブル」に戻そう。

 

この漫画には大御所の「ゴルゴ13」に通じる、徹底したプロフェッショナリズムが描かれる。主人公の佐藤明(偽名)はスナイパーとして卓越した能力を持ち、いかなる相手でいかなる状況でも道具を選ばず6秒で抹殺することができる。

 

視覚聴覚はもちろん嗅覚まで総動員して、部屋の監視カメラなども瞬時にどこにいくつあるかを見抜く。だが、無駄な殺生は絶対にしない。この辺も含めてゴルゴことデューク東郷に通じものがある。

 

しかし佐藤明にはゴルゴのようなオーラは一切ない。のっぺりした顔で地味な風体だ。彼がそんなに凄腕のスナイパーだとは誰も信じられない。

 

しかも「売れない三流芸人」である上半身裸にネクタイを締めて寒いギャグを飛ばす「ジャッカル富岡」の芸を観ているときのみ、大笑いをするという風変わりな面を持つ。

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このあたり小説「ジョーカーゲーム」での「スパイとはグレーリトルマン(灰色の小さい男=目立たない男)だ」という定義づけに通じていて、リアルでもある。

 

また、「仕事」に関してつきまとうあらゆる事柄に「プロ」として向き合う。

 

ちょっと笑ってしまうのだが、物語の冒頭、一年間身を潜めるために大阪の大平市(架空の市)での暮らしを始めるが「プロ」として普通の生活を送るために小さいデザイン会社で時給800円で働く。

 

最初は雑用係だったのが、まじめな働きぶりによってちょっとしてイラストを描く仕事をさせてもらったりして、やがて時給が1000円に昇給する。スナイパーの仕事では膨大な報酬を得る彼が、「プロ」として平凡な男を生きているのだ。

 

そんな彼や相棒の佐藤洋子(偽名)やボス、そのほかの彼を取り巻く登場人物のキャラクター設定も、人間味とリアリティがあって面白い。

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この漫画にはいくつもの魅力が詰まっている。凄惨な格闘シーンやギャグも散りばめながらも、冒頭に述べたアウトローなりの惻隠の情や人間への普遍的な愛情が描かれている。

 

そして裏社会の中での「勧善懲悪」ものという、マイナスにマイナスを掛けてプラスになるような要素も孕んでいる。これぞ大人の漫画だ。

 

とりわけ彼の格闘中の描写は、とてもクールで素晴らしい。彼は戦うときにひとつひとつのアクションに戦略を込めている。

 

頭の中で瞬時におこなわれる戦略の思考・シミュレーション・選定そして実行に移す過程が「心の中の声」としてアクションと同時進行で描かれるが、これがまさに惚れ惚れするプロフェッショナル思考プロセスなのだ。

 

映画も公開された賛否両論の模様。筆者は観ていないが、佐藤明役にカリ・ジークンドー・USA修斗の 3つの格闘技を習得している岡田准一を起用する辺りの「戦略」は、目の付け所がよいのではないかと思う。

 

ともあれ、そんな凄いスナイパーなのだが、やたら猫舌であり、熱いものを食す時は相棒の洋子にフーフーしてもらうという場面が結構あって、そういうギャップがたまらなく魅力的だ。

 

またそれらちょっとしたディテールの積み重ねが、この物語に通底する「平凡なヤツだとナメてたら実は殺人マシーンだった」というリアリティをさらに鮮やかに際立たせる。

 

大人のための極上のピカレスクコミック「ザ・ファブル」を強くお薦めしつつ、このコラムを閉じることにする。

 

 

 

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