或る物書きの英語喉と小説まみれのジャズな日々

  英語喉とジャズと小説をこよなく愛し、映画・アニメ・漫画・R&B・70年代ロック・Suchmosなどに眼がない或る物書きが綴る

エリック・クラプトンのスローハンド奏法の真実

 

音楽ファンなら "Eric 'Slowhand' Clapton" という言葉を一度は聞いたことがあると思う。グラミー賞を実に18回も受賞したエリック・クラプトンは、音楽史上に名を残す偉大なギター・プレイヤーであり、2019年(令和元年)の8月現在、74歳ながらもいまだ現役で音楽活動をしている。

  

 

~スローハンド語源の所説を喝破するクラプトン奏法の実際~

 

1960年代前半、彼が若い時に「ヤードバーズ」というバンドに参加していた。このバンドは後にもジェフ・ベックやジミー・ペイジといういずれも世界3大ギタリストの候補となり得るトップレベルのギタリストを輩出した、インキュベータ的な伝統がある。

 

この時代に彼は「スローハンド」と異名をとるプレイで、音楽ファンを痺れさせた。

 

 

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この言葉に関して三つの説があるが二つは誤解であると、ギタリストでもある筆者は断言しておく。誤解のひとつめは、指が早過ぎて逆に遅く見えると言うものだ。これは完全に間違いであることは後ほどの説明で証明する。

 

二つめの誤解は、ライブで弦が切れた時にクラプトンが弦を交換するのが手が遅い・・・だからスローハンドと呼ばれたというものだ。このような逸話が、彼のギターの素晴らしさを讃える異名となるはずがなく、おそらくはアンチクラプトン派の浅知恵による中傷と思われる。

  

本当の理由は指の動きがゆっくりなのに、音が次々と湧いてくる・・・・・これだ。 そもそもギター巧者は可能な限り無駄な指の動きをしない。そして、巧すぎる彼のプレイは極限まで無駄を省いた省エネ奏法で、あらゆる意味で出来るだけ指を動かさずに弾く。

 

そして、彼の場合はチョーキング、つまりギターの弦を押さえたまま持ち上げて音程を変化させるテクニックとかグリッサンド、同じく押さえたまま指を別のフレットに滑らかに移動させてメロディに彩りを添えるテクニックなどに秀でていた。 

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例を挙げればギターの5フレットの1弦と2弦を左人差し指で一度に押さえ、薬指に中指を添えて3弦の7フレットを押さえる。3弦を引くと同時に中指と薬指で弦をチョーキング、つまり持ち上げて一音上げてしまう。まずこの1動作で音が2つだ。

 

次に左指は動かず、すでに押さえられている2弦と1弦を順番に弾く。そしてチョークアップしていた薬指を2弦の8フレットにさっと移して、それを弾くやいなや10フレットまでグリッサンド、音を響かせながらスライドするのだ。これでさらに4つの音が続いた。

 

一連の流れでこのフレーズを弾くと、指の動きは薬指がちょっと上がってから少し下がって横にずれる・・・それだけだ、目に見える動きは。しかしメロディは少なくとも6音、もっといえばチョーキングやグリッサンドのニュアンスにより7〜8音ぐらいに感じさせる。

 

だからこそ、観ているものは不思議な感覚に陥るのだ。こういうアプローチがスローハンド奏法の組み立て方だ。

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基本的な巧さとそれらのテクニックを総動員して・・・・静かな指の動きでダイナミックなパッセージを弾きまくる・・・これは痺れる。また技術だけではなく、彼はギターをエモーショナルに泣かせるのだ。それはチョーキングによる表現力の極地だ。

 

有名なビートルズのホワイトアルバムに収録されている、 "While my gutiar gently weeps" に参加した時の彼の素晴らしいサポート、というか主役を食うほどに素晴らしいリードギターのプレイは音楽史上に永遠に残る魅力溢れるギタープレイだ。

 

 

おそらく白人では彼が一番「ギター泣かせ」ではないか? ちなみに黒人で最もギター泣かせは・・・言わずと知れたブルースギターの神様、B.B.キングだと思う。

 

この二人のコラボ・ブルース・アルバムがあるけど、これは最高に渋くて、かつ洗練された大人のブルースアルバムだ。

 

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ともあれ、クラプトンは基本的に無駄な動きがない上に、それらのテクニックを動員するので・・・・演奏を観ている人には指がほんのりしか動いていないにも関わらず、激しくダイナミックなフレーズが流れ出てくるように感じる。筆者も一度だけだが、日本公演でそれを目撃した。

 

見た目と音数や迫力に、とてもギャップがあるのだ。あれを目の当たりにすると、誰でも不思議に思うだろう。だからこそ、スローハンドのニックネームがついたのだ。

 

 

↑この武道館ライブは数あるクラプトンのライブ盤の中で、彼の愛器「ブラッキー」の枯れているのに瑞々しい最高の音色が堪能できる、唯一のアルバムではないだろうか?

 

今や伝説的な、タバコを吸いつつレミマルタンのジンジャーエール割りを呑みながらのレイドバックしたステージは、クラプトンのカッコ良さが最高に醸し出ている。

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ここからは、例によって英語喉に絡んだ余談だ。

「機関銃英語」という言葉が表すように、ネイティブスピーカーが普通に喋ると、音数がたくさん出ていて圧倒されるという印象が一般的だ。 

 

でも、怯まず観察すると・・・実はあんまり口も、舌も動いていない。口と舌がほとんど動かないのに機関銃のように音が出ているとはどういうことか?

 

このあたりは現在Kindle出版準備中の、筆者の英語喉誕生秘話を描いた小説にて詳しく書いてあるが、この現象はシラブルの取り方だ。このブログ内の以下のコラムを参考にして頂きたい。

~最多ブックマークの人気コラム~

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このネイティブの口は「スローハンド」現象と似ている。何故か一般的に日本人で、ある程度英語を喋れると思われている人が英語を喋るときは口の形や舌の位置・巻き方がアクロバティックでスローではなく、サウンドCHOPPY、つまりブツ切れだ。ネイティブのように滑らかにつながっていないのだ。

 

一方、英語喉はどうか。喉を開放し深い位置で発音すれば、可能な限り口や舌の動きが少ない方、自然な方、楽な方、やりやすい方を追求することでどんどん正しい発音に迫っていくのが英語喉の醍醐味だと思う。 

 

そうすれば自然とスリービートになっていく。子音と子音で母音を挟む形=例えばsum/mer, ten/nisのように。自然と(音声学者の言うところの)リエゾンし、自然と(同じく音声学者の言うところの)フラップTになる。

 

さらに、自然と(音声学者の言う)弱形強形(に聴こえるような発話)になるのだ。

 

要するに喉を開放してリラックスして喋るほどに、ネイティブスピーキングに近づくという法則だ。クラプトンは省エネの弾き方であり、それが格好良い弾き方だ。同じく省エネかつネイティブに通じやすいのが「英語喉」の発話だ。

 

ギタリストが「スローハンド」を目指すとしたら、英語学習者は「スローマウス」「スロータン」とでも言うべきか?

 

ともあれ、クラプトンがそうであるように、「達人は無駄な動きをしない」という法則はどのようなジャンルにも、共通して言えることなのかも知れない。

 

脱線して申し訳なかったので、最後にクラプトンのスローハンド奏法が、これでもかと堪能できる素晴らしい演奏のYouTubeを紹介してこのコラムを閉じることにしよう。

 

youtu.be